民俗学的に見ると、葬儀というのはその地域の特色や風習が色濃く現れているため、研究対象としてはとても興味深いものであるといいます。特に、死者を送る儀式には、その地域固有のものが多く見られます。例えば、亡くなった人が生前使用していた茶碗を、お葬式の出棺の際にあえて割ってしまうという儀式を行います。
これは、故人がきちんとあの世へ旅立つようにとの願いが込められており、そうした死者への配慮が儀式として行われています。また、棺に納める持ち物にも、地域ごとに違いが見られるようです。例えば、とある地域では棺に針を入れたお団子を一緒に入れておきます。
これは、冥土への途中に鬼に出くわしてしまった場合、針の入ったお団子を鬼に渡すことで、死者が難を逃れるためのものであると考えられています。こうした儀式は地域によって明確な違いが見られ、時としてそれは滑稽にも見える風習として捉えられることがあります。
しかし、その地域に長らく伝統として続いてきた風習は、葬儀が簡略化されつつある現代においても密かに受け継がれています。家族葬の増加に伴って葬儀の風習は薄れつつありますが、それでも根強く各地の風習が残っていることがわかります。